岡本クリニック日記

岡本クリニック メンタルケア室    岡本慶子 精神科医

町の小さな診療所

当室は統合失調症のグループ療法専門なので、メンバーそれぞれに主治医が別におられる。

開設2年で、44人の主治医からの紹介で登録メンバーは60人近くになった。
そのうち7割が診療所から、3割が病院からの紹介だ。
診療所には統合失調症患者さんはいないと言われることがあるけれど、そんなことはない。

一件あたりの診療所で見れば、大多数はうつ病やいわゆる「神経症圏」の患者さんで統合失調症は少数派だ。
でも京都には精神科診療所が70以上ある。
一件あたりは少なくても、件数が多いから全体で見れば少なくないのだろう。

京都盆地の周縁に精神科病院が点在し、中心市街地に診療所がたくさんある。
メンバーは具合の悪いときに病院を利用して、落ちついたら通いやすい診療所に移った人が多い。
相性のよいホームドクターをもつ人からは、主治医への信頼と安心感が伝わってくる。

異動がなくいつも、ずっとそこに居てくれるホームドクターをもつ意味は、精神医療においては他科にもまして大きい。町の小さな診療所はとても大切だ。

















SAの力

OSA(大阪スキゾフレニックス・アノニマス)とのお付き合いは3年前に始まった。

SAとは、統合失調症(と関連疾患)をもつ人たちによるセルフヘルプ(自助)グループだ。
アメリカ発祥、日本でも徐々に広がっていると聞く。
主な活動は定期的なミーティングだ。8つのステップに基づき「言いっぱなし、聞きっぱなし」のルールで進められる。助言者はおらず、問題解決の話合いでもない。

はじめはOSA2周年のオープンスピーカーズミーティングを聞きに行った。
事前に問い合わせをしたら丁寧なお手紙が返ってきた。本当に親切に対応してくださった。

以後、「当事者による当事者のためのシンポジウム」に出演してもらったり、他団体からの依頼講演に一緒に出てもらったりで、これまで4人のメンバーの口演を聞かせていただいた。

それぞれの方の言葉の深さと、深みから希望が見える輝きにいつも驚いた。

一度、ふだんのミーティングに座らせてもらったことがある。場はおだやかで優しくて、一人ずつのお話が寄せては引く、静かな海のようだと思った。

その海に、いったいどんな力があるのだろう。

バレーボールチームのこと 1

私にはひいきのソフトバレーボールチームがある。

生来運動が苦手で見る趣味もなかった私に、チームを応援する楽しさを教えてくれたのは、精神疾患をもつ人たちのソフトバレーボールチーム ル・クールだ。4年前、バレー好きの当事者有志が集まって誕生した。

「精神障害者ソフトバレーボール」は全国規模で行われている。地方大会を勝ち上がったチームが全国一を争う。通常のチームは医療・福祉等の支援団体が母体になっている。

ル・クールはちがう。どこにも属さない。当事者が立ち上げ、自分たちの足で施設訪問をしてメンバーを増やしてきた、自らを「自助グループ」と呼ぶ異色のチームだ。

2009年、できたてのチームにはまだル・クールの名もなく、人数は試合にぎりぎりという少なさ。それでも大会に出たい。エントリーには「監督」が必要だった。たとえ形だけでも・・・。

その頃の私は前職を退いて開業準備中。前職の縁で練習をひやかしに行っていたら、白羽の矢が飛んできた。
ルールさえ知らない私に、メンバーは資料を作って懇切丁寧に教えてくれた。
形だけの監督もどきがチームの一員として参加した。あっさり敗退したけれど、楽しい思い出だ。

そんなチームが2012年全国大会準優勝なんて、誰が予想しただろう?







思いを書いていただく

私は話すのが苦手だ。
思いが話し言葉になってすらすら出てくるタイプの人間ではない。
だからふだんは無口だ。
でもこうして書いていると、少しずつ出てくる。

統合失調症をもつ方々の中にも、無口だけれど書いていただくと思いが出てくる人が少なくない。
だから私のところでは、なにかと書いてもらう機会がある。
まとまった文章でなくていい。誤字脱字全然かまわない。思いは十分に伝わってくる。

ときにはミーティングの前に、テーマにまつわる各自の思いをメモしてもらう。
無理なく書ける範囲でいい。書きたくない人や必要のない人は書かなくていい。
それを見ながら発言してもいいし、緊張で発言できなければメモだけ提出してもいい。

「当事者による当事者のためのシンポジウム」では、参加者全員に配るアンケート用紙に添えて小さな鉛筆をプレゼントする。
筆記用具を持参する方は少ないから、鉛筆をわたすことはとても大事だ。
アンケートは言葉で書いていただく。よくある「あてはまるところに〇」では、何も伝わってこないから。
たくさん返ってくる。ぎっしり書き込まれたもの、短い言葉に深い思いを込めたもの。

小さな鉛筆から紡ぎだされた言葉の一つ一つが、光っている。







開設2年の思い

他院通院中の統合失調症患者さんたちが、主治医の先生の治療を続けながら2つめの診療所として利用する。でもデイケアではない。

そんな形は前例がないらしい。外から見れば、何をするところか分かりにくいと思う。
それでもいろんな方々のご協力とご理解があったから、2年間やってこれた。

当事者、ご家族をはじめとして、医療機関、診療所協会、保健・福祉・労働など関係機関のご協力、行政の理解、どれがなくてもうまくいかなかっただろう。
恵まれたスタートに感謝のきもちでいっぱいだ。










 

 

 
 

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