恩師M先生は、決して偉そうにされない。
患者さんに対しても私たち若輩に対しても、いつも静かに控えめに接してくださる。

そんな先生が珍しく、あるテーマで臨床論文を書くようにと何度も促してくださったことがある。昔、大学病院にいた頃だ。
筆不精でなかなか手をつけない私に、先生はたびたび「あれ、書いてる?」と尋ねてくださった。
粘り強い促しのおかげで、いつかは書こうと思いつづけることができた。そして10年もたって、ようやく書き上げた。そんなにお待たせしたのに先生は快くご校閲くださった。そして、そのテーマは以後の私に大きな影響を与えた。

70代半ばになられた先生は、今も私を思いがけない出会いに導いて下さったりする。
人生の要所を方向づけて下さるご指導に、感謝は言葉につくせない。