岡本クリニック日記

岡本クリニック メンタルケア室    岡本慶子 精神科医

就労支援

就労支援の経験から 4 続・中小企業の社長さんたち

「障害者雇用」に熱心な中小企業の社長さんたちには、お身内に「障害者」がおられその人への想いに背中を押されている方が稀でないように思う。

雇用はきれいごとではすまないけれど、心うたれる熱意に出会うこともあった。

就労支援の経験から 3 やおき福祉会の北山守典氏

前職は元は一般的なデイケアだった。
必要に迫られて個別就労支援を始めたとき、モデルにしたのはやおき福祉会の紀南障害者就業・生活支援センターだ。
当時ご活躍中だった故北山守典氏を中心とする実践に感嘆した。

就労に必要な準備訓練をし、企業と協力関係を築いて就職先をみつけ、ジョブコーチを含む手厚い個別支援でフォローを続ける。桁違いの高い就職率、そして就労後も安定して働きつづける人が多い。
従来の日本で福祉的就労として行われていた、一般就労に直結しない作業訓練や集団処遇とははっきり違った。のちにアメリカから輸入されたIPSとは働く現場での個別支援で共通するが、紀南では準備訓練にも力を入れており就労後の継続性がすぐれていた。

北山さんには、デイケアメンバー一同で見学に行った折に説明していただいたり、就労支援関係の会合で何度かご一緒した。温かい、ざっくばらんな語り口。借り物の理論には無縁なお人柄。
実践のオリジナリティーと熱意は、現実を見る透徹したまなざしに裏づけられていた。






就労支援の経験から 2 中小企業の社長さんたち 

今年も中小企業の社長さんたちからお年賀状をいただいた。
前職で就労支援に関わっていた頃からのお付き合いだ。

その中に、京都中小企業家同友会所属の方々がおられる。
同会の「障害者問題委員会」は「障害者雇用」に熱心だ。
前職では職場実習への協力をいただき、会合にも何度も出させていただいた。

東京での集会に連れて行ってもらったことがある。社長さんや雇用担当者ばかりで医療関係は私だけ。ひっそり紛れて聞いていた。
「精神疾患をもつ人を雇用したが調子をくずしてしまわれた」と、従業員を傷つけてしまったとばかりに胸を痛めている社長さん。なんとか仕事を続けてもらいたい、一緒に働き続けたいと語る企業人たち。
医療とも福祉とも無関係な企業の会合で、こんなに誠実に語り合っておられるのかとカルチャーショックだった。

当時、精神疾患をもつ人の就労支援方法としてIPSがアメリカから輸入され、医療福祉関係者を中心に関東で実践が始まっていた。手厚い個別支援で早期の就労をめざし、続かなくても「良い経験だった」とポジティブに考えるのが一つの特徴だ。
しかし関東の企業人には批判的な人もいた。面倒見よく抱えてゆこうとする企業にとって従業員の退職は無力感につながり、せっかく挑戦した雇用から手を引きかねないと。
アメリカと日本の企業風土の違いを考えなければならないと教えられた。

医の中の蛙である私には、強烈な印象だった。忘れられない。

なぜ就労支援機関を見学するか ~「振り分けられる」支援から「選ぶ」支援へ~

今年度の関係機関見学会が始まった。就労支援機関を中心に、見学してゆく。

当室のメンバーは就労希望者ばかりではない。また、いつかは働きたいが今ではないという人も多い。クローズ就労希望で支援つきオープン就労を好まない人もいる。

それでも、「こんな支援もある」という情報に接しておくのは大切だと、私は考えている。
メンバーから「就労支援機関や制度のことをもっと早く知っておきたかった」「デイケア以外にどうしたらいいのか分からなかった」「支援があると分かるだけで安心する」などの声をきいてきたから。

もちろん一般企業で働くばかりが人生ではない。ほかにもいろんな道がある。
でも、支援を知らずに「無理だから」とあきらめた人にとっては、再び可能性が広がることだってある。

早く働くほうが良いという意味でもない。働くのはその人に応じた時期がよい。それまでゆっくり過ごしたり、デイケアやB型事業所(作業所)を利用するのもよい。
その後の進路のイメージをもっていれば、次のステップにいつ進むのか、考えやすくなる。

クローズ就労もよい。ただ万一それで行き詰ったとき、支援つき就労の知識はセイフティーネットになる。

だから、「利用しなくてOK。知識として知っておくのが目的です」と見学会を案内する。
実際のところ、すぐ利用する気のない段階で見学できる機会は、そうそうないのだから。

見通しの分からないままに勧められた機関に「振り分けられる」のではなく、自分で知り考え相談しながら支援を「選ぶ」ようであってほしい。


先日は京都障害者職業センターと京都障害者職業相談室を見学した。
メンバーと家族と一緒に訪問。職員さんが4人で担当してくださって、とても丁寧に対応していただいた。
現在の雇用状況や、支援内容の説明のあと、たくさんの質問にひとつひとつ答えてくださった。

今年度の見学会は就労移行支援事業所(当事者の体験談含む)、府立高等技術専門校、就業・生活支援センター、認知機能リハビリテーション体験と続く予定。


就労支援の経験から 1 働く現場での個別支援

前職(精神保健福祉センターデイケア)での最後の4年間、就労支援を担当した。
現場に出向いての個別支援を重視した、デイケアの就労支援としては当時珍しいものだったと思う。
デイケア施設内でのプログラムを改良する一方、外にも出てゆく。メンバーも大変だがスタッフも努力した。

職場実習やハローワークへの同行はもちろんのこと、必要あればジョブコーチ同様に職場にも行った。
作業の遅さを問題視されていたメンバーの隣で同じ作業をさせてもらったことがある。
・・・私のほうがずっと遅かった。思い出すと冷や汗がでる。

幾人ものメンバーが、パートではあるけれど一般企業で働きはじめた。
6~7年たった今、すっかり会社になじんでいる人たちがいる。
企業家や会社の方々とは今もお付き合いがある。メンバーのことでではない。別件で連絡を下さったり、クリニック主催のイベントにひょっこり顔を出してくださる方もあって、とても嬉しい。

それまでの私は、会社とはお金を稼ぐための装置だと思っていた。
しかし私が出会った企業家たちは、経営を大切にしながらも会社という仕組みを通してもっと先を見ておられた。







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